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日生劇場「グレート・ギャツビー」 [観劇感想(その他)]

日生劇場「グレート・ギャツビー」
2017年5月12日(金) 13時 1階K列上手


東京出張で時間が空いたので(って空けたんだけど)観劇です。
今回は日生劇場へ行きました。小池先生の「グレート・ギャツビー」見たことなくて。
主演は井上さんだし、これは見ておきたい!と思い、行ってきました。

大正解。行って良かった!小池作品の良さが生きている。
原作がしっかりしているのだろうけど、台詞が深くて、演出が効果的に映える。
なによりみんな芝居が上手くて、映画より良かった。
デカプリオの映画は見ているのに、ストーリー忘れていたくらい記憶に残ってない。
(豪華なパーティ場面と、ラストのプールの場面だけ覚えてた。私の記憶って・・)
今回初見のように、まったく意識をそらされるとなく見入ってしまった。
このあたり、原作ありの小池演出の真骨頂ではないかと思うのだわ。

私の中ではニック役の田代さんが素晴らしかった。もちろん井上さんも良かったけど、ストーリーはニック視点で動くから、観客はニックの感情と同化してしまう。井上さんは台詞にならない感情をしっかり表現されていて、観客はニックと同じように感じとることができた。お二人とも上手いわ。
そしてデイジーの夢咲さん。上手いときの夢咲さんだ!(嬉)
マートル蒼乃さんもジョーダンAKANEさん、トム広瀬さん、ジョージ畠中さん、マイヤー本間さん・・凄く印象的に上手かった。

今回はダンス場面が凄くたくさん入っていて、これも宝塚風味でしたが、男役(男?)が
カッコよく踊っていて、満足。宝塚よりキラキラ感は減少するものの、良い意味での男臭さが出ていて、私は好き。ダンスナンバーがゴージャスだから、この作品がもつゴージャス感が出ていいねえ。この人数でこの迫力。さすが実力派揃い(と言ってよいのですよね)

私は大変満足しました。大阪に来た時も見に行きたい!と思って帰ってきました。


201705グレートギャツビー.jpg

有名な話ですが、ネタバレあります。



ミュージカル「グレート・ギャツビー」
原作 F・スコット・フィッツジェラルド
音楽 リチャード・オベラッカー
脚本/演出 小池修一郎


上でも結構書いてしまってますが、小池先生の作品の中では「私が好き」な演出と脚本でした。小池先生の演出は大好き、でも「うーん」と思う作品もあるので、すべてが絶賛ではないですが、どんな作品でも、場面転換のやり方は素晴らしいと思うのです。今回は、さらに装置が素晴らしくて(松井ゆみさんですね)場面転換がさらにスムーズに、自然に、印象的に行われていた。流れるような場面転換なので、意識が途切れない(現実に戻らない)んですね。こればかりは、ほかの演出家さんに参考にしていただきたい技術だと思うのです。
その装置。なんと表現してよいかわかりませんが、宝塚でいうと稲葉先生が好きそうな感じ?でしょうか。松井さんの装置は美しいですね。今回はその使い方も秀逸でした。場面場面のセットも、一瞬で場所が変わったのが分かり、また場所ごとの雰囲気が「その場所で起こる出来事」と似合っていて、場の持つ力がはっきりと感じられました。ブキャナン邸、ギャツビー邸、自動車工場、酒場。特にギャツビー邸の高低を利用した階段と、酒場の場面の装置と人の使い方が、宝塚の良いところを応用した感じで好きですね。
もう一つ効果的なのが、衣装。特にデイジーとジョーダンの衣装が美しくてセンスが良くて、これぞ上流階級!という服装でとても良かった。荻田浩一作品は衣装も素晴らしかったので効果をさらにアップさせていたことが多かったけれど、小池作品ではあまり衣装で思うところはなかった。でも!今回の衣装はみなセンスが良かったわ~!
脚本は、原作通りなのだと思うけれど、台詞に含蓄があり、さすが名作!と思うところが余すところなく生きていたと感じました。それを生かしたギャツビーとニックのやり取りも良かったし。トムとデイジーの関係、マートルとトム、マートルと夫、それぞれ台詞に書かれていない背景が見えたような気がします。



ジェイ・ギャツビー(井上芳雄)
裏の世界で成り上がった成金・・だけど純愛。今回はとってもとっても純粋で真摯で、純愛の人でした。だから余計に宝塚のように感じたのかも知れません。ダークサイドの場面ももちろんありましたが、そこでも「酒はいいが、ドラッグには絶対に手を出さない」という信念を貫くなど、現代から見ると全然ダークな人ではない描き方をされているし、若いころの純愛を一途に思い、彼女のために成功し、他人妻になった彼女をひたすら陰から愛し続ける・・最後には文字通り命を懸けて彼女への愛を貫いた。小池先生らしい、宝塚でも王道を行く主人公像です。映画で見たような享楽的な部分やダークな部分が少なく、誠実なニックが友情を感じるのも道理、デイジーが彼に惹かれたのも納得、という役作りでした。ま、これは井上さんのキャラクターが生かされた形なのかもしれませんね。この作品のギャツビーは、騒乱の最中にも孤独、悪の世界でも誠実、愛する人には一途に自己犠牲的な愛を捧げる人物ですから。そして彼の死後の孤独。ニックだけが、隠していた彼の心の内を知る唯一の理解者、たった一人の友達だったのだと、ラストシーンは切なくも幸福を感じられる場面になっていました。

誠実でまじめなイメージのある井上さんが、この享楽的かつ狂信的な人物を演じる・・ということで、どんなだろう?と思ってましたが、私の思うギャツビー像は良い意味で裏切られ、井上さんらしい愛されるヒーローに仕上がっていました。ニックが彼を愛し理解したように、観客もギャツビーを理解し愛し、ニックと同じように彼の人生を悼むことができました。
井上さんはデビューの時(「エリザベート」のルドルフ)を見ましたが、凄く大人の男になられたなあ~としみじみします。これからの日本のミュージカル界をけん引する方なのだなあと実感しました。当然ですが、歌も絶品でしたよ!


デイジー・ブキャナン(夢咲ねね)
南部のお金持ちの名門のお嬢さん。まだ若いころに出会った貧しい軍人と恋に落ちて・・でも成就できず。彼女もお嬢様の割には勇敢で自分を持っているようなので、ギャツビーが手紙を返してさえいたら、きっと待ち続けていただろうと思われる女性です。
彼に捨てられたと思ったから、もうギャツビーとは縁がなくなったと覚悟を決めたから、トムと結婚した。そういう割り切りもできる強い女性。物事を考えられる賢い女性なんですよね、実は。でも南部名家のお嬢さんなら、「同じような金持ちの奥様」以外の人生の選択肢は、存在しない。それを拒否しようとして失敗した。そこに彼女の悲劇があったと。
彼女が歌う「女は綺麗なおバカさんが一番よ」というのは、彼女の人生への悔恨が溢れていてかなり来る。
ギャツビーと再会後にもう一度、決められた人生を飛び出そうとするが、その時には娘時代よりもっともっと強固な呪縛が存在していて、彼女はそれが見える賢さを持っていたから、またしても逃れることはできなくなった。彼女がもっと馬鹿なら、何も考えずにギャツビーのもとへ走ったかもしれない。何もかも捨てて、周りが不幸になろうと構わないという無神経さを持っていたら。(そういう女性なら、ギャツビーとの貧しい暮らしに耐えられず、すぐにまた逃げ帰るだろうな~とも思う。考えなしで感性だけで動くから)
ラストシーンも、本来ならデイジーは自白したかったと思う。けれど、ギャツビーの気持ちを正面から受け止める強さと、自分の娘や夫を守らなければならないことを理解して、重い十字架を背負って生きることにしたのだと思う。そんな最後の行動でした。
映画で見たより、ずっと思慮深く賢い女性に見えました。
正直、夢咲さんはあまり「賢い」というイメージは無くて(失礼)、どちらかというと、頭の軽い美人というイメージを持っていたから、これは驚き。見た目は可愛いけど、品があって台詞にない哀しさや苦しさを表現できるなんて・・凄い!と思ったのでした。夢咲さんは、以前、轟さんと組んだ作品(オセローが下敷きの)が一番好きでしたが、今回もとても素敵でした。夢咲さんのこういう芝居はいいですね!できる人なんだと思うけれど、相手役の影響が強い人だと思うのでした。今回も井上さん、広瀬さんが凄く上手かったですから。
あと衣装!凄く素敵なドレスばかりで、それを見事に着こなしていて、ねねちゃんさすが!と思いました。


ニック・キャラウェイ(田代万里生)
陰の主役ニック。彼の視点でずっと物語が進むのだから、当然! ニックの見たまま、彼の感じたままが客席の印象なのだから、それはそれは重要な役。透明でいて存在感の大きな役です。
デイジーの親戚なのだから名門出身だと思うけれど、富豪ではなく誠実に自分で働いて糧を得ている人。エール大の同級生というトムとは、上下関係(スクールカースト)が見えるし、そこからは弱さ―面倒ごとを忌避する性格、も感じる。そんな彼が、通常ならかかわりを避けるだろうギャツビーと友情をはぐくんでいく様が、素晴らしい。ギャツビーが真摯に彼に心の内を打ち明け、助けを求めたからだろうと思われる。ニックは誠実でまじめな人だから、ギャツビーの真剣な想いを受け取り、手助けしたように見えた。
だから彼の死後、ニックだけがいろいろと手を配ったのだと。逆に言うと、ギャツビーが心を許したのはニックだけ、ニックだけがギャツビーを理解した。だから二人の間に友情が芽生えたのだと、そう思える関係でした。これはこれで物語の重要なテーマではないかと感じましたわ。
田代さん、透明な存在感が絶品でした。彼のデビューも「マルグリット」とのことで、私見てる。あの時はあまり・・・でしたが、凄く良いミュージカルスターやん!と今回思いました。認識を改めます。


トム・ブキャナン(広瀬友祐)
南部の富豪の出身で、生まれたときから王様、それが許される才能もあったのだと思う。だからこその自信と傲慢。それでデイジーを落としたんだろうな~と思える。何もかも手に入って当然の人。他人に称賛される申し分ない妻デイジーと娘、享楽的な愛人マートルも、全部自分のもの。禁酒法だってお構いなし。思うままの人生。
そんな彼だから、もし妻が彼を捨ててほかの男と駆け落ちしたら・・?許せないでしょうね。
デイジーを愛してるとかそういうのは関係なく、自分がほかの男に劣るようなことは許せないと思う(ちなみに女に人権は認めて無さそう。飾り?)。だからその兆しを見つけたときは、全力で妨害した。どんな手段でも構わない。デイジーはそれをよく知っていて(やっぱり頭いいから)、愛する人との駆け落ちをあきらめたのだと思う。トムならどこまでも追いかけて二人を、二人に関わったすべての人を破滅させるだろうから。
傲慢で自信家の彼でも、愛人をひき殺され、その復讐に妻の愛人が射殺され(デイジーから真相を明かされたと思います)いろいろ考えるところもあったでしょう。見た目よりずっと傷ついていたと、ラストシーンを見て思いました。傷ついてなかったら、妻が愛人の葬儀に出たいと言っても許さないに違いないもの。彼も成長したのだなあ・・・と思うラストシーンでした。
広瀬さん、上手いわ~絶品だわ~。もとから素敵な方と思ってましたが、背が高くてイケメンで、あの傲慢さが許せる男性でした。マートル目線で見てしまうくらい。マートルにとっては憧れの象徴、地獄からの出口、だったのでしょうね。


ジョーダン・ベイカー(AKANE LIV)
デイジーの親友で、家に同居している。でも彼女自体はキャリアウーマンというか、全米チャンピオンのプロゴルファーなんですよね。この時代に珍しい自立した女性だ。
だから賢くてしたたか。デイジーよりマートルよりずっとずっと計算ができる女性。素直で育ちの良いニックを誘惑したり、でも利用価値がなくなり危なくなると、さっと身を引く。この防衛本能!こうやって生きてきたのね、と思うのでした。冷静でクールに物事を見ていて、でもアドバイスはしない。見てかき回すだけ。遊んで暮らす上流階級に対する憎しみも見えるような気がしました。
神月茜さんですよね、宝塚雪組で見た記憶もあるし。それよりもAKANEになってからの方がよく見ているかも。宝塚時代は背が高くて美しい男役だったと記憶してますが、結構早い時期に退団されたような。その後こうやって活躍されているのをみると、正解ですね。


マーテル・ウィルソン(蒼乃夕妃)
汚い自動車工場、経営者とはいえかなり年上の夫と暮らすのは、彼女にとって苦痛でしかない、と見えました。妹まで一緒にいるところを見ると、この姉妹はかなり貧しい家の生まれで、経営者の夫にそこから拾い上げてもらい、妹もついでに、とうがってしまいます。だけど、マートルはここからさらに上への出口・・・本物の上流階級の男トムと出会い、愛人になることに成功。妹も協力してくれる(当然か)。マートルは貧しい老齢の夫など捨てて、トムの愛人になりたかったのだと思う。愛人だってトムなら、それなりの住まいとお金を渡してくれるはずだもの。だから、夫に閉じ込められその道が立たれようとしたとき、必死でトムにすがろうとしたのだと、そう思いました。黄色い車の運転手がトムなら、絶対に停止し、彼女を乗せて走り去った、、と思うのですね。運命のいたずらから、夢の世界への出口があの世への入り口になってしまった。
マートルは生命力にあふれた女性。欲望を隠さず、本能のまま生き生きとした正直な女性。心のうちを隠す上品な妻を見ているトムには、大層魅力的に映ったでしょうね。(でも絶対に正妻にはしないね。「妻」には自分に似合う生まれと育ちと教養と美貌が必要、と思ってそうだから。マートルが結婚を迫ったり、夫と揉めだしたら、速攻別れそうよ)
蒼乃さん、凄く似合ってよかったです。強い女性が上手いイメージがあったのですが、ぴったりでした。


ジョージ・ウィルソン(畠中洋)
自動車工場の経営者。実直な理系男で、女にもてなさそう。だからマートルにすがられて、助けて、好きにさせて。それで幸せを感じるような男なのでしょうね。でもさすがに、彼女が自分を捨てて出ていくのは許せないよね。好きな男の一人や二人、浮気くらいは余裕で許しそう。本気も許しそう。だけど自分を置いて出ていくのは許さない。そういう愛し方。
周囲からは、マートルに利用されているのが丸見えなんだけど、本人はそれでもいい。愛しているんですよね。これも一つの愛の形か。深いわ。
で、結局、彼女を奪ったものに対し、命がけで復讐した。彼もまた愛に準じた一途な男でした。ある意味、ギャツビーと同じタイプの男なんですね。
畠中さん、名演技だったと思います。


マイヤー(本間ひとし)
マフィアのボス。ギャツビーを拾って育て、引き立ててやった男。「友情は生きている人間とだけ」という信念のもと、生きているときはちゃんと向き合ってくれます。彼は裏の世界で普通の常識的な人物。だから「純愛」とか言われても「は?」という感じ。ギャツビーの想いなんて1ミリも理解できません(理解したとしても共感できないって)。
ギャツビーを裏の世界の常識で追い詰める様子、なかなか素敵でした。ポリシーを貫き、行動の美学があるなあと感じ入る。そうやって生き残ってきたんだろうな、と思いました。
ダンディでダークな、素敵なおじさまでした。
 

あとは簡単に。
デイジー付きのメイド・ヒルダ(七瀬りりこ)。彼女が娘時代のデイジーの駆け落ちを止めてなかったら、物語は変わってたよね。今回もデイジーの娘を抱いてちょろちょろしてますが、基本、彼女の母エリザベスの思考に忠実な方。常識人です。りりこさんは歌が素晴らしかった印象があるのですが、今回はあまり聞けなかったかな。

デイジーの母エリザベス(渚あき)は、上流の南部女を体現した方。そして母として自分の常識で娘の幸せを願っている。ギャツビーにとっては、乗り越える壁の象徴みたいな存在でしたね。デイジーにとってもかな。

マートルの妹キャサリン(音花ゆり)は、姉にくっついて姉と一緒に人生を楽しもうと、脱出しようと頑張っている向上心のある娘。でも最後は姉の名誉と、夫の心を考えた話をするなど、頭が良くて優しい子なんだなあ、と思いました。・・保身かもしれないけどさ。
音花さんも歌うまかった印象ですけど、宝塚ではお母様とか上品なや大人の女性役が多かったので、今回びっくり。


ギャツビーの父(イ・ギドン)。ギャツビーの半生がラストシーンで怒涛のごとく語られる、それを一手に担う方。観客は一句と一緒に、ギャツビーが「ジミー坊や」と呼ばれ、一生懸命努力する優しい少年だったことを知る。老いた父にも援助をしながら、黒い世界に関わらせまいとする心遣いも知り、父の話を聞くニック同様、彼を追悼する場面になっていました。余韻、さらに感情を増幅させる場面の最大の貢献者が父でした。



こんな感じ。ギャツビー邸のパーティや、酒場のマフィアたち、ゴルフの観客、と男性を中心にダンスナンバーがありますが、どれもかっこよかった。宝塚でも使えそうな振付だけど、本物の男性が踊るから、骨太に感じる。特に酒場の場面は絶品でしたね。(若い男役には出せないダークな気骨、を感じました。宝塚でもこの雰囲気を出せる人って、少ないんですよね~)
私は最初から最後まで、気を散らせることなく見入りました。これは小池作品の中でもかなりの上位に入ると思います!(私の好みの作品リストの、ですよ)




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