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宝塚月組「夢現無双/クルンテープ 天使の都」

宝塚月組「夢現無双/クルンテープ 天使の都」
2019年3月21日(木祝)15時 イープラス貸切 2階13列上手

月組公演を見てきました。久しぶりの月組での日本物(しかもサイト―さん)とタイがテーマのショー。「アジア」なショーならあり、その1場面に「タイ」はあれど、全編タイとは!

結果、サイト―さんとは感性が合わない、ということが確認できた。すごいあらすじダイジェスト。「原作のあらすじは分かった」というのが収穫。「90分でわかる宮本武蔵」がテーマですか。
作中の成長が感じられたのは又八で、吉岡清十郎が筋の通った武士で、吉野大夫の雰囲気が良かったなあ~って感想。小次郎ってキリシタンやったんか!と驚き(創作らしい)、武蔵とお通は最初から最後まで変わらない?と驚く中、又八が一人年月の経過と重みを感じさせてくれた。

ショーはそこそこ面白かったけど、タイの歴史も現代タイ事情も良くわからないので、何やら金ぴか!という印象と、普通の現代風のアジアンテイスト・ショーという感じでした。
印象に残ったのは、輝月さんの美声と、月城さんと暁さんのカップル(四角関係の場面)の麗しさ。
もう一回行く予定だからショーを楽しんでくる。

201903月武蔵泰.jpg

グランステージ
『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より-』
脚本・演出/齋藤 吉正

すごいダイジェスト。なんだか宙「天は赤い川のほとり」を思い出す。こんなことがありました!というエピソード紹介で時間が進んでいき、私には何がテーマでどこが山場かわからなかった。
原作が「宮本武蔵」というタイトルだから、宮本武蔵の人生がテーマなのか?と思うが、いろいろな出来事が同じ比重ですっごく早く流れていく上、武蔵の成長が全く感じられなかったので、私の感覚からすると「では講師の先生をご紹介します。宮本武蔵先生は〇〇年生まれ、〇〇年に××され・・」という略歴紹介を聞いている気分。本編(宮本先生紹介プロモーションビデオ)が終わったら宮本武蔵先生が登壇して講演会が始まるような気分だった。そう、宮本武蔵 衆議院議員の自叙伝出版記念パーティみたいな。先生がこれから語るのよ。少年時代からいかに苦難を乗り越え、糟糠の妻(お通)の支えがあって、天才的な才能を持つ先駆者(佐々木小次郎)と戦い、勝って政治基盤を作ってきたか!」という成功物語を語る会だ。本編(苦難の修業時代)のあと「ここにお集まりの皆様の支えがあってこそ!今の私があるのですっ!」っていう後半生の成功ストーリー講演が始まるのね。なんか後援会事務局長・本位田又八が司会してそう(笑)、吉岡清十郎が後援会長かな(大笑)

ってな気分になった。90分のプロモーションビデオはが長いわ。
このプロモーションビデオ(公演)の宮本武蔵、頑迷で考え無しで人の話を聞かない。考えたと思えば卑怯で、あまりに卑怯すぎて誠実さや思いやり・人情が全然感じられない。こんなプロモーションビデオでいいのか?と心配になるわ。多分、武蔵先生が講演で、「ご覧いただいた通り、私は昔はやんちゃ坊主で他人の言うことも聞かずに、大勢の方にご迷惑をおかけしましたが・・・」とか言って、宴会場に座る沢庵和尚や柳生氏が「そうだそうだ!悪ガキでな~」って言って、会場が大笑いするんでしょうね。で「若さゆえ浅学で手段を択ばず、本当に申し訳ないこともしてしまい」とか言って、来賓の佐々木小次郎先生(引退した元議員)が苦笑する、と。それもこれも今の立派な宮本武蔵先生があってこその「笑える」ことなのですよね~。私はその前半生を反省して人格者となった立派な宮本武蔵先生の立派な部分(公演には入ってない)を見てないので、笑い飛ばせませんでした。

とまあ私の想像は置いといて。
本当にこの公演の宮本武蔵、ええとこなしでは???と思ったのでした。第2部で「こんな卑怯な悪ガキが!」とアッと驚く逆転の成功物語でもなけりゃ、宮本武蔵の支持者はいないよ(ってまだ政治家設定だ)。

宮本武蔵と佐々木小次郎と言えば、やっぱり巌流島の対決をメインに持ってくるかな~と浅はかな私は思っていた。話は全然知らないけど、それなら武蔵と小次郎、因縁の対決のはずだから、それぞれのそこに至るまでの邂逅と葛藤、因縁を丹念に描いて、クライマックスは対決の瞬間になるべき・・と思うのだわ。本作、佐々木小次郎が全然描けてない。あまり出てこないうえ、出てきたら、フラふらっとかっこよく銀橋を歩くだけ?彼の心理状態は?さらにクリスチャン設定にしたなら、それにまつわる葛藤が山のようにあるのでは?でも全然語られない。冒頭の武蔵父との場面だけ。その武蔵父が最後の最後に武蔵に重くのしかかっていた!という設定だったので、それならより一層、小次郎、武蔵父、武蔵 の3人の関係をしっかりと描かないといけないよね。小次郎⇔武蔵父、その拘りをもっと武蔵父を出して武蔵に語らせるとか、武蔵が小次郎を会う前から意識する必要があると思うわあ。小次郎にとっても、武蔵父を打ち破ることが大きな目標になってて、とかしないと、勝負したとはいえ常勝の小次郎からしたらそんなオジサン一人覚えてないってレベルじゃないの?。その因縁を武蔵⇔小次郎に絡めて持ってくるなら、もっと説明やエピソードしっかり入れて欲しい。武蔵父の存在がさらっとしてたから、最後にびっくりした。あの書き方で、この因縁は読み取れない。
武蔵(たけぞう)のやんちゃエピソードばかりで、彼は全然成長しないのもなあ。幼馴染で同じように出て行った又八は、世間でもまれてエピソード一つごとに成長して戻ってきたのに。やりたい放題の武蔵も、ずっと武蔵を追いかけるだけのお通も、村にいた子供時代から成長が感じられなかった(私には)。時間が足りないんだろうなあ~原作読んで脳内保管してくださいってことなのだろうか。次に見に行く時までに原作を読んでみるか。

カラスの演出が上手い!死体をあさるカラス(黒い鳥)が出てきて、それが寂寥感や虚無感を演出していた。これはいいなあ。武蔵には白い鳥が付きまとっていて、この鳥が希望とか光という感じなのだけど。黒い鳥のほうが出番多い。


<宮本村の人々>
宮本武蔵(珠城 りょう)
村の悪ガキ時代のエピソードから始まる。力自慢で、弱い奴は負けて当然、強さこそすべて!という価値観で生きている。まあガキ大将にはよくある思考だ。それが成長し、世間が広がるに従い、力にも腕力以外のものがあり、また力以外に大切なものがあることに気づいていくのだが・・・武蔵、全然気づかない。最後まで気づかない。最後の最後に気づいて修業の旅に出る!というラストシーンだった。遅いだろ、遅すぎやん・・・と私は思った。
つまり本作中の武蔵は、全然成長しないのだ。母親はもとより、沢庵和尚や本阿弥、柳生雪舟斎、吉岡清十郎、そして佐々木小次郎、さらには吉野大夫にまで言われたのにねえ。あんなにいろいろな人にいろいろな言葉で示唆されながら、全く気付かない。鈍感力が凄すぎる。彼の前半生を描いていて、彼がほとんど出ずっぱりなのに、この成長のなさ。見ていて脱力する。忠告する人のあまりの虚しさに共感してしまった。
とりあえず、宮本武蔵氏の偉大な後半生が見てみたいものだ。でなきゃ・・・。

珠城さんは体格が良くて剣豪に見える。それは良い。殺陣も良かった。ただ武蔵に成長が全く見えなかったのは、脚本の責任も大きいが珠城さんの仕事にもあるのではないかと思える。珠城さんは「カンパニー」の実直誠意のサラリーマンがぴったりはまったように、もともと「枠の中で生きる」人物が似合う。それは「グランドホテル」の男爵も、「ALL for ONE」のダルタニアンも。基本、まじめな優等生タイプの役が似合う人。型にはまらない破天荒な人物が似合わない。(破天荒な人物が似合うのは、壮一帆さんや早霧せいなさんとか、と私は思う。蘭寿さんや真飛さんが似合わないタイプ。珠城さんはこっちグループ)。似合わないタイプの役を当てられたというのもあるけど、悪ガキ時代には迫力がない。悪さして木に括りつけられたら、似あうタイプなら助けてやりたいって思う。でも似合わないタイプの人は性根たたきなおさにゃって思う。悪いことしても卑怯なことしても、似合うタイプの芝居なら、「本能」として許せる。似合わないタイプの芝居だと、熟慮の末の卑怯と思ってしまえて、なんだか許せない。まあ大変自分勝手な私の見解なのですが、印象としてはそういうもの。だから似合わないタイプの役者で、似合わない芝居をする珠城さんの武蔵には、全然共感できなかった。ごめん。

お通(美園 さくら)
子供のころから武蔵を慕っている。孤児で本位田のおうちで「いずれは息子の嫁に」と養われている身分。だけど、武蔵が好きで村を出奔して駆け落ちしよう!!って言える勇気と行動力のある娘さんだ。もうそりゃあストーカーかって程好きな男を追いかける。養ってくれた家のことや婚約者のことは忘却の彼方。なんだかな~。好きな男に一途で、彼の傍にいることだけを願い、彼の成長も自分の成長も視界にない。それもなあ~
彼女も制約のある厳しい生い立ち、さらに好きな男は冷たい態度なのに、「彼の傍にいる」という目的のためにはすべてを捨てて追いかける情熱の人。最初から最後まで暑かった。「たけぞうさあーん」というセリフしか記憶にない。ずっと名前を呼んでるだけ。全然答えてもらえない印象しかない。ヒロインなのに、武蔵に何のサゼスチョンも与えてないし。なんだこのヒロイン?とサイト―さんに聞きたい。はっきりいって、この作品はお通無しでも十分成り立つストーリー展開やん。幼馴染の3人で、男同士は親友で、女は婚約者じゃない男が好きで・・ときたら「星逢一夜」みたいだけど、全然違った。誰もお通を好きじゃない。なんか可哀そうだ・・・お通。
お通の視野狭窄は怖いけど、誰にも愛されない可哀想な人だから、武蔵しかいないから、そうなったのかなと思う。彼女自身、あれほど武蔵を欲したけど、武蔵自身を見ていなかったみたいだし。武蔵がどんなダメ男でも傍にいてくれたらそれでよかったんだね。でも最後の最期も置いていかれていた。武蔵はお通を好きだと言ってくれたけど、それでも自分のほうが大事なんだって思わせるラストシーンだったから。
美園さんの大劇場初ヒロイン。こんなヒロインともいえない役で可哀そう・・・ずっと「たけぞうさーん」って遠くから叫んでる印象しかない。存在も地味で、着物も地味で。ショーがあってよかった。


本位田又八(月城 かなと)
武蔵とお通と幼馴染。見ているとどうも村ではお金持ちの家の子なのかな。お調子者で、武蔵と一緒に武蔵に誘われて戦に出かけ、そのまま伊吹山で年増女とイイ感じになって村に帰らず。又八の立ち回りは一回もなかったので、腕には自信がないようですね。女の資産で店を開くも、仕事がなくって女に裏切られて飛び出し、免許を手に入れてそこから詐欺師(カタリというのか)へ。顔が良くて口が上手くてハッタリが効くようなので、商売人になればよかったかも。結局、ばれてしまって(その対処も上手い)親が迎えに来て、故郷に戻って僧侶になると。
彼の人生も波瀾万丈。楽なほうに流れていましたが、そのたびに一応教訓を得て、それを身の肥やしにしているように見えた。なんだかね、宮本村の幼馴染3人が村を出てから、それぞれいろんな出来事に出会ってる。その中で又八だけが、それぞれの出来事で少しずつ変わっていくように見えたのだな。なぜ彼が僧侶の道を選んだのかがわかるような気がする。彼は変わった。最初の何も考えてないお気楽な若者から、女にはまったり騙されたり騙したり、都会の魅力と怖さを知り、親の情を知って、戻ってまっとうに生きる気になったんだと感じた。少しずつ顔が変わっていくのだな、又八。いろいろな出来事で成長していく途中が見えて楽しかった。
月城さん、やっぱりいい仕事するわ、芝居が上手い。ちょっとちゃらけて笑いを取る役っていうのは、上手く演じないと笑ってもらえないものね。主役に比べれば少ないエピソードで成長が見えたし、私は凄く好感を持った。不満と言えば、月城さんの武士姿はとって端正で美しく、長袴も裁けるくらい着物姿も美しく青天も似合うのに、今回殺陣が一個もなかったのが残念で。いや又八が剣豪になったら設定上困ると思うけど、過去何度も剣豪な場面を見ているから、ちょっと殺陣みたかったなって思った。「前田慶次」も「星逢一夜」も新人公演主演がカッコよかったし、初バウ主演も「銀二貫」と日本物の所作も似合う人なので、又八に必要ないほどかっこよかったです。


沢庵宗彭(光月 るう)
宮本村の和尚ですが有髪です。坊主なのに坊主にしてなくていいんだ~と思った。この人が一番最初から武蔵の欠点を見抜き、彼を良き方向に導こうとたくさん助言や警告をしている。武蔵はまーったく聞いてないけど。同じくお通にも、いろいろ忠告をしている。お通は理由がわかってないながらも聞いているだけまし。二人とも、沢庵の言葉を深く心で聴いていれば、もっと違う人生があったのでは・・・と思えるほどだ。
とにかく最初から最後まで、要所要所はずっと出てくる重要人物でした。


お杉(夏月 都)
又八の母。息子が大事でいろいろと世話を焼くが、うっとおしがられて出奔される。一人息子が母を置いて出奔できるほど財力もあったのでしょう。 結局、息子を探しに行き(熱意の人だ)、息子を見つけて連れ帰る。世間にもまれるうちに息子も大人になり、母の心を分かってくれた。ああよかったね~。安心してぼけてしまったけど、もう大丈夫。
この母も、最初から最後まで要所に出てきて、又八の成長を知るポイントになっていたように思う。
ちょっと老母すぎたかな?とも思うけれど、時代を考えれば相応かな。


新免無二斉(紫門 ゆりや)
武蔵の父、小次郎に敗れた人。この人がかなりのキーマンだと思うのだが、あまり出てこない。冒頭幕開き一番に、小次郎と対決してあっさり敗れた場面から始まるのだけど、そこの因縁がそこまで書いてないから、なんだかな。小次郎との確執、執念、そしてそれを息子・武蔵へ伝えることが武蔵の確執を形成するのだから、もっと出番(亡霊でもいい)ともっと役割をと思うのでした。

政(玲実 くれあ)
武蔵の母。「つよくならなくてもいいのよ」と言いに出てくる回想の人。武蔵はこの母の言うことを覚えていたけど、全然わかってなかった・・・ということが実によくわかる。父が小次郎への確執や執念を語り、母がこの台詞を言う、というならとても良い脚本だと思うけど、父のほうがあまり・・だったので、母のこの台詞の効果が半減したような気がする。武蔵も母のこの台詞を胸に刻めよ!!と思ったのでした。母の顔を思い出すついでにしかとらえてなかったなあの子は。


お吟(楓 ゆき)
武蔵の姉。もっと出番が謎の人。宮本村で武蔵と二人暮らしの姉、最初に武蔵のせいで捕縛されたはずなのに、武蔵はその後姉のことを全然気にしない・・・姉のことはどうしたのよ?とこちらが心配になる。いつ解放されたのかもわからないし、村にひとり放置でも気にならないようだ。姉も弟のことを気にしてたのだろうか?その場面はない。お杉が又八を心配する場面が多かったのに対し、お吟は全然出てこなかった。この姉弟・・・このくらいの比重なら、別に姉いなくてもいいよね?ってくらいで可哀そうだった。原作にあるから出したけど、端折られたんだろうな。


<剣客>
佐々木小次郎(美弥 るりか)
武蔵の人生クライマックスに出てくる重要人物・・のはずなのに、彼・小次郎については全然描かれてない。もっと場面作って、武蔵が目指す人物がどいう言う人物なのかを語ってほしい。ただの剣豪じゃないのでしょ?父の代からの因縁のある男なんでしょ?なぜ佐々木小次郎という男の人物像が描かれないの?と思う。ここはサイト―さんを問い詰めたい。
小次郎がキリシタンで、この後弾圧が待っていて大変な時代を迎える予兆があるとか、そういうのであれば、彼の不安を描く場面とか、キリシタンなのに剣豪という教義と生業に対する彼の葛藤とか、あるでしょうと思う。いつも憂いのあるお顔で歩いてらっしゃるが、詳しくは語られない。小次郎サイドの人物がほぼ登場しない。吉野太夫が少し語るくらいか。少なすぎる。ちゃんと仕官している彼が無頼の武蔵をどう思い、彼との対決をどうとらえていたか、分かりにくかった。もうあんな兄ちゃん無視しとけば?約束の刻限過ぎたら不戦勝よ、帰ろ!って助言してあげたいくらい。なんか納得のいかないラストでした。
美弥さんは大変美しく、憂いのある細身の剣士は良いのですが、胸のあたりが何かデカい?最初何か隠してるのかと思ったほど、着物の懐あたりがぼっこりしているように見える。シルエットが妙というか・・もっとすっきり(天草四郎風に)着ればいいのに・・と思ったのでした。
退団がこれか~と非情に残念。「カンパニー」が主役みたいだったから、あの作品で退団だったら私は満足だったなあ~と思いつつ。サイト―さんは何も考えてないに違いないと、ちょっと怒りがわいてきた。


柳生石舟斎宗厳(響 れおな)
あの柳生の当主。お通を預かり、武蔵に稽古をつけてくれた偉大な剣豪。彼の指南もまた、全然武蔵には伝わっていなかったようだけど。武蔵はイイもの持ってるんだけどね~あのままじゃだめだわ、っていう柳生氏の心の声が聞こえそうだったわ。


吉岡清十郎(暁 千星)
彼こそが武蔵の目標だったと思う。小次郎は武蔵父の因縁だけど、吉岡清十郎は武蔵自身の因縁だから。彼もまた武蔵にいろいろ忠告やら指南していたのに(まあ言い方はアレですが)、そのお返しが一門全滅ですか?ほんに情のわからん奴じゃのう~と呆れた。子供まで全員殺さなくても良いでしょうに。和尚ではなくてもため息もんです。卑怯には卑怯と考えた伝七郎は偉かったけど、その上をいく武蔵。清十郎は「卑怯はだめだ」と止めていましたね、さすが当主。
清十郎は、ちゃんと正統派の武士として、武士の矜持を持ち続け貫いていたと思う。武蔵や伝七郎が「勝つためには手段は択ばない!」と勝利至上主義になって、武士の誇りを失っているのに対し、清十郎は敗れてもなお誇りを持った武士であり続けた。その筋の通し方が見事だった。
どんな卑怯な手段でも手柄を立てればいい!という考え方は、農民が足軽として戦に参加しているときのメンタルのような気がする。曲がりなりにも職業軍人なら、それは名誉に反することなので嫌がると思うな。武士は名乗りを上げて正々堂々と戦い勝利しなければ意味がないと。武蔵は足軽のメンタルで、清十郎や小次郎は武士のメンタル。同じ土俵に乗ってないよね。
今回の暁さんは、いつもの白い王子様を封印して、まるで別人。大人の男、しかも誇り高き武士。すごいよ!意外と似合う。幼い王子様のイメージとは全然違ってすごくかっこいい。


祗園藤次(輝月 ゆうま)
吉岡道場の高弟。彼はまた足軽とも武士とも違うメンタルというか、商売人のメンタルをお持ちのようだった。つまり生き抜いてなんぼや!という根性ですね。武蔵に吉岡道場が滅ぼされ、同輩が皆殺しにされた時もうまく逃げ延び、芸人などしながら生き抜いている。それもまた一つの生き方ということで、興味深く見ていた。

吉岡伝七郎(夢奈 瑠音)
清十郎の弟で、卑怯な武蔵に怒りを覚え、同じ手段で彼に勝とうと考えた。でも武蔵のほうが一枚上手だったため、勝負に負けたどころか絶滅させられてしまう。なんだんかな・・・すごく頑張っていたのに、残念な結果で哀れだった。清廉な兄を歯がゆく思い、自分が跡目を継いだ時には張り切っていたのにね。
夢奈さんも芝居が上手いのか、伝七郎の心理はとても伝わってきた。武士の在り方を考えさせてくれました。

辻風黄平(宍戸梅軒)(風間 柚乃)
野武士ですね~関ケ原を生き残り、衣吹山で盗賊になっていたのですが、武蔵に兄を殺され(この時点では武蔵は卑怯ではなく、兄は殺されても仕方ない)、その後逆恨みで武蔵を付け狙う、と。その間自分も修行に励み名を変え、鎖鎌の習得もしていたようだ。無頼に見えて割と努力家です。
しかしながら、その間武蔵もまた修行を積んでいて、あっさり敗れてしまう・・・。何しにでてきたの?と考えていましたが、原作ではきっともっと役割がちゃんとあるんだろうな~端折られたのね・・という出番でした。
暁さんもわからなかったけど、風間さんも全然わからなかったよ!もっともっと上級生だと思った。その貫禄にびっくり。芝居が上手いのは知ってたけど、本当に上手いと思った。出番が少なくて残念だ。


<その他>
お甲(白雪 さち花)
戦の隙間を縫って懸命に生きるしたたかな女、もちろん玄人筋の方。戦場で死者を追いはぎして生きるとは、なかなかに罪深い。それをなんとも思わず「生きるためだからいいだろ」としているところが、精神強すぎ。だから又八が惹かれたのかもしれない。目的のためには手段は択ばない、という精神、又八の母や親友の武蔵に通じるところがあると思う。又八や武蔵よりかなり(一回りは)年上の婀娜っぽいお姐さんで、二人は上手く手玉に取られて利用されてました。
しばらく又八がツバメをやってましたが、もっと金持ちの頼りがいある男を見つけて、又八あっさり捨てられてしまいました。又八、良い社会勉強したな・・・と肩をたたいてやりたい。最後に見つけた祗園藤次さんとは似た者同士に見えたので、最後にしてベストパートナーではないだろうか。
姐さんの生き方、いいねえ。

朱実(叶羽 時)
その姐さんと一緒にいて「娘」と言われているが、親子関係にはないらしい。姐さん一人より、若い娘も一緒にいるほうが活動しやすいのと、やはり縁と情だね。武蔵に片想いをしているのですが、これが大変分かりやすい。気が付いてないのは武蔵くらいだろうな。切ない片想い場面やら、言葉の端々に見える想いが、まるでヒロイン。出番も多くて2番手ヒロインですね。


吉野太夫(海乃 美月)
吉野太夫は小次郎と武蔵、両方に接する唯一の女性かと思われる。廓で大夫を張っているだけあって、かなりの度胸と懐の深さがあり、イイ女。綺麗で雰囲気も良く、大変素晴らしい存在だった。小次郎と大夫の場面、もっともっと深めて欲しい。もっと場面を増やして、小次郎の心理を彼女と語ってほしかった。ちょっとだけやん! 二人と接する唯一の女性だから、彼女が武蔵と小次郎とを、(観客に対して)つなぐことができたのに~と思う。吉野大夫は、登場人物の女性で一番好きだ。
海乃さんは綺麗で儚げなその雰囲気が、大夫という虚飾の存在にぴったりだった。上手いわあ。


本阿弥光悦(千海 華蘭)
武蔵に忠告をくれる人の一人。趣味人でたいてい吉野大夫と一緒に出てくる。結構いい役だった。


城太郎(結愛 かれん)
武蔵の強さに惹かれて弟子入りし、ついて回っている子供。武蔵もこの子は可愛がってるのか?と思いつつ、あまり気にしてなさそう。一応面倒を見てあげているので、良しとする。守る存在ができたら、彼も変わるかなあと、城太郎が出てきたときは思ったけど、あまり変わらなかったような気がする。
どっかの村で仏像彫っているときに傍にいた子は違う子なのね。城太郎かと思ってたら違った。登場人物多すぎ・・・。

とこんな感じで、原作にある登場人物を全部だしときましたよ!!というサイト―さんの声が聞こえるようだ。でもって、人物は全部出したけど、それに関連する全部のエピソードは入らないから、出てきた人物を見てその人にまつわるエピソードを脳内補完しといてね、って感じだ。原作必読やね。
90分しかないなら、人物ごと端折らないと原作読んでないと分からん。物語を進めるにあたって必要なエピソードだけ取り上げ、それに必要な人物だけ出せばいいのに。大勢の組子に役を!という精神は素晴らしいが限度があるでしょ、話が混乱する。「90分見ただけで原作を読んだ感動が得られる」ように、上手くまとめて欲しいなあ~と思います。原作付き作品はダイジェストではない。




レビュー・エキゾチカ
『クルンテープ 天使の都』
作・演出/藤井 大介


過去アジアがテーマのショーはあったけど、タイというピンポイントのテーマのショーは初めて見た。
それなりに楽しい。ただタイの歴史に詳しくないし、タイの現状も詳しくないので、よくわからない。タイの一般的なイメージだけなら1~2場面しか作れないので、歴史や現代を入れているように見えた。タイ観光局とタイアップしているのだろうか?行ってみたい!とはならなかったけど。
あと、暗転が多くて、流れが悪いように感じた。TVでみると、黒い画面にタイトルが浮き出る時間が多い感じかな。ショーは流れるような場面展開が楽しいし、暗転はよほど場面がきっぱり変わる場面にしか使ってほしくないなあ。ストーリー性のある場面からの切り替えとか。ハイわがままです。

「武蔵」を一生懸命覚えて書いたら、ショーは記憶が曖昧になってきたので、覚えているところだけ書きます。

プロローグは金ぴか!の印象が強い。タイの歴史っぽいのですが、よく知らないのでわからない。とりあえず被り物がパゴダみたいで、「ああタイやな~」って思った。あれが似合う人は凄いと思うけど、美園さんが着こなしていたのが素晴らしい。

次がムエタイ対決場面。赤が月城さん、青が暁さん。暁さんのほうがジャンプの高さがあり、動きが軽快。だから当初、暁さんが勝利するのが大変自然に見えた。でも月城さんが後半盛り返し、最後は勝利。なかなか筋書き通りで面白い。綺麗と可愛いが戦ってるわ~!と楽しかった。

で、珠城さんと美弥さんのはだしのデュエットダンス。こ、これは私が期待していたトップコンビではないか?と思う場面。そう以前も書いたと思うけど(「バッディ」の感想かな)、珠城さんにはトップ娘役は不要で、美弥さんが相手役というのが一番似合うと思っていたのだ。大介先生もそう思ったのだろうか?体格が珠城さんは一回り大きく雄々しく頑健、美弥さんは華奢で妖艶。似合うよな~と堪能した。特に美弥さん、そこらの娘役には出せないこの雰囲気。このコンビで、湖月さん&安蘭さんのように「王家に捧ぐ歌」や、壮さん&早霧さんの「Shall we ダンス?」みたいな作品が見たかった。本当にもったいない。

中詰めはその「Shall we dance」。ずっと同じ曲が続く。タイのイメージがある曲だが、映画は全然関係ない状況。私は上記で書いたように雪組公演を思い出し、そういえば、この公演(新人公演も)で月城さんを意識したなあ~と関係ないことを懐かしく思い出していた。
この場面の幕開きは輝月さんの女装。大変インパクトのある女装で、まつげバシバシで、目が離せない。大変キワモノっぽい。だが、歌が最高!結構長くて転調するが、それが上手い。本当に聞き応えがありました。あの姿でも絶賛するわ。

ポールダンスの場面。思ったようなポールダンスでなくて良かった(「ミス・サイゴン」みたいなのだったら嫌だわ、宝塚で見たくない)。大変上品な感じで、振り付けもおとなしかったし、暁さんは上品に収めていた。冒頭、月城さんが黒タキシード(こういう正統派の落ち着いたスタイルが素晴らしく似合う)、白いヒラヒラミニドレスの美園さんをエスコート。銀橋を歌いながらわたるのだけど、歌上手いわ~好きなタイプの歌声だ。美園さんも可愛らしい。
舞台奥では、珠城さんと暁さんがコンビで踊る。ここの暁さんは女装ではなく女役。ショートパンツでなかなかのスタイルで美人。可愛いかっこいい女って感じかしら。この4人が四角関係になる。定番ストーリーですが、とても見ごたえがありました。最後、暁さんが結構活躍してて、おお!というストーリー展開に共感しました。いいストーリーだ。

ラインダンスは衣装が可愛い。エキゾチックな感じで、良かった。センターの人が大変目立っていたけど、誰だかわからなかった。

美弥さんの退団らしい場面が、大階段前の銀橋ソロ・・・こんだけ?って気がする。もっと場面があってもいいのになあ。美弥さんメインの場面が印象に残ってない。黒燕尾で歌ってせり下がり・・物足りない。大階段にその他男役がスタンバイ。黒燕尾に金のターバンって。タイやないよそれ・・と突っ込みたくなった。ここの男役総踊り、風間さんが結構前に来ていて出世したなあとしみじみ。

パレードは管理職コンビのエトワールから。大変珍しいと思う。管理職就任祝いなの?初めて見た。(次の雪組も歌が上手い管理職コンビなので同じパターンでもいいよ)。ここで歌を聞きつつ、やっぱり月城さんの声が好きだなあと思う。ふと、羽根が肩羽根になっていることに気づいた。なんで?

こんな感じです。タイって限定しないでもよい気もするしタイの人が見たらどういう感想かわからないけど、私は「タイがメインのアジアンテイスト宝塚レビー」って印象でした。

次はS席で見れるから、ちょっとだけ楽しみ。



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hanihani

2回も観たのに芝居で2回とも爆睡しました。ごめんなさーい
もうマジでつまらなくて困りました。目覚めたら敵討ちが終わってたというか、今回の芝居はるうさまが主演ですよね?
さくさくが何回も「沢庵さまーー!」と呼ぶしね。武蔵って最低の男だよね、待ってろ詐欺に引っかかったら青春が終わってしまうよ、お通さんと言いたい!

新人公演を観たら、たまさまよりも風間ゆのちゃんが武蔵に似合っているしセリフが明晰なので、お話がぐんぐん頭に入りました。
お通のまりこちゃんも良かったですよ。
子の役はさくさくには似合ってなくて、彼女のお披露目がこれって
気の毒だなぁと思いましたね。
だって、出番少なくてもうみちゃんの大夫のほうが印象に残ったし。
是非、月組の新人公演を観て欲しいです。
続きは直接話すね(笑)

by hanihani (2019-04-06 15:57) 

えりあ

私もS席で見たけど、やっぱり納得できなかった。武蔵が卑怯すぎる・・周りの小次郎、又八、清十郎までがそんな酷い男じゃないから、武蔵の行動に理がないし、彼の良さが差別化できない。武道の話なのに、こちらがメインじゃないとは。で恋愛はといえば、お通のさくらちゃんずっと「たけぞうさーん」って叫んでいて、報われる場面がない。武蔵の「心の声」を除くとずっと冷たくあしらわれているようで、ほんとにヒロイン?という役回り。一緒に見た人も「海ちゃんの大夫役のほうがイイ役じゃない?」といっていた。

新人公演よかったのね!うわ行きたかった。映像を待つわ。風間さん上手いもんね。鎖鎌さんも上手くてびっくり。


by えりあ (2019-04-06 21:04) 

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